雷電為右衛門が最強と言われる理由は?白鵬とどちらが強い?
ここ数場所、休場が続き引退も噂される横綱・白鵬ですが、幕内最高優勝44回を誇る成績を踏まえると、大相撲史上きっての「最強力士」と言っても過言ではないと思います。
ただ長い相撲の歴史を紐解くと、「生涯10敗」という驚異的な成績を残した力士がいることに気が付きます。江戸時代中期に活躍した「雷電為右衛門」です。
雷電為右衛門はどのような力士で、どれ程強かったのか。
今回は、この雷電為右衛門が「最強」と言われる理由やその逸話、また白鵬と雷電為右衛門が戦ったらどちらが勝つかについて、私の意見をご紹介します。
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962という脅威の勝率、同じ相手に負けたのは1回だけ!
まずは雷電為右衛門の成績を見てみましょう。
まだ大関が最高位で、横綱は「名誉職」としての色合いが強い時代に雷電為右衛門は、現役生活21年、江戸本場所36場所中27場所で大関を張り、254勝10敗、2分、14預、5無、41休という成績を残しました。勝率は脅威の.962を誇っています。
「現役最強力士」である白鵬の令和3年5月場所終了時点での横綱在位中の成績は在位82場所で884勝129敗217休、勝率は.873といいますから、雷電為右衛門のあげた成績がいかにとんでもない数字なのかが容易に理解していただけると思います。
さらに凄いのは、この10敗の中で同じ相手に2度負けたのは、後に大関に昇進する市野上浅右エ門、ただ1人だけだということ。
しかも、寛政3年冬場所から同12年春場所までの9年間に渡り、市野上からの2敗以外は全勝しており、この負けがなければ「106連勝」を達成していたというのです。
※参照:日本の相撲の歴史を簡単に解説。起源はいつなのか?
強さの秘訣は脅威の肉体、得意技はつっぱり
雷電為右衛門のこの驚異的な成績を支えてきたのが身長197センチ、体重172キロという、今の力士と比較しても遜色ない立派な体格であることは間違いありません。
当時の日本男子の平均身長は約155センチといいます。力士はそれよりも大きかったと想像できますが、それでも170センチあったらかなり大きい方だったのではないでしょうか。当時の力士の平均身長が170センチだったと仮定しても、雷電為右衛門とは約30センチの差があることなります。
雷電為右衛門の身体を少し前の力士で例えるならば、元大関の把瑠都(現タレント兼格闘家)とほぼ同サイズとなります。ですが、相撲の取口はというと、把瑠都が四つに組んでからの寄りや投げを得意にしていたのに対し、雷電為右衛門は「つっぱり相撲」が得意だったそうです。
その根拠として相撲評論家の柴田雅雄氏は、雷電為右衛門の取組を実見した人を祖父に持つ嘉永生まれの人に聞いた話を紹介していますが、ほかにも「雷電為右衛門は生涯に『2分』しかしていない。江戸時代の力士としては非常に少ない数字ということから考えても、突き押し主体の攻撃型の相撲であった可能性が高い」と論じる人もいるようです。
私自身、相撲が持つ攻撃性が如実に現れる「つっぱり」は大好きな技の1つで、見るとつい興奮してしまうのですが、最近は力士が頑丈になったのか「つっぱり」だけで勝負がつくことは少なく、大抵の場合は「つっぱりで有利な体制を作って相手に付き、最後は押出し」というパターンが定着しているようです。
それだけに、平成24年1月場所の日馬富士対稀勢の里の一戦で、日馬富士のつっぱりで稀勢の里が崩れ落ちた場面は興奮と戦慄、あらゆる感情が沸き起こったシーンとして、今でも記憶に強く残っています。
雷電為右衛門は「ボクサー」だった?
雷電為右衛門の「身体」について考える時、1つだけ気になる逸話があります。それは、雷電為右衛門の体重が172キロもあったにも関わらず、1790年の初土俵から1811年の引退までの21年間、「膝を痛めた」という記録が伝わっていないことです。
当時の日本男子の平均身長が低かったことは説明しましたが、巨漢力士が小兵力士と対戦する時には、今の感覚では往年の名力士・舞の海みたいに土俵上をちょこまかと動きまわって巨漢力士の後ろにつき、そのまま押し出すしか戦法がなかったとみるのが普通です。その時に巨漢力士が対戦相手に合わせて土俵上を動きまわっていたとしたら、体重がネックとなり膝を故障すると思われます。
しかし、雷電為右衛門には膝を炒めていたという記録はなく、「つっぱり相撲」で勝っていたと言われています。そこから推測できるのは、雷電為右衛門は立会いから圧倒的な体格差を活かして対戦相手を飲み込み、序盤から「プロボクサーがカウンターパンチ」を放つようにつっぱりを繰り出すことで対戦相手に勝ってきた力士だということです。
相撲ファンが夢見る「雷電対白鵬」、その結末は?
雷電為右衛門が今の相撲界にいたとしたら、どのくらいの活躍ができるのでしょうか。
相撲など格闘技ファンは「カシアス・クレイ(モハメド・アリ)対マイク・タイソン戦」や「ジャイアント馬場対アントニオ猪木戦」などを妄想しては、居酒屋などで時が経つのも忘れて話し込む習性があります。相撲ファンなら絶対に雷電為右衛門と現役最強横綱との対戦を妄想の中で対戦させた経験があるでしょう。
仮に白鵬との「夢の最強対決」が実現したとしましょう。雷電為右衛門は間違いなく立会い時からつっぱりで白鵬を攻め立てるでことしょう。一発でも良いのが入れば、白鵬のノックアウト負けも十分に考えられます。そのつっぱりをかいくぐって雷電為右衛門の胸につけられれば白鵬の勝ちは濃厚になるでしょう。雷電為右衛門は、自分と同じような体格の力士との勝負経験に乏しいと思われますので、その点でも白鵬は有利です。つまり短期勝負なら雷電為右衛門、大相撲になれば白鵬と言ったところでしょうか。
またルールによっても勝敗は変わってくるはずです。今のルールなら、慣れている白鵬が有利。江戸時代のルールが採用された場合には、「禁手」への恐怖などで白鵬が戸惑うと考えられるので雷電為右衛門に分があると思われます。もっとも最近の白鵬は「ちょっと荒っぽい所作」が世間から非難を浴びていることを考えると、「禁手OK」のルールのほうが翻って生き生きと戦えるかもしれませんね。
ただ、ここで言っておきたいことが1つあります。それは「雷電為右衛門と白鵬が戦った場合には『雷電為右衛門が負ける』可能性が高い」と書いていることに対してです。この敗北は雷電為右衛門の偉業、強さになんら影を落とすものではありません。
というのも「強い雷電為右衛門」がいたからこそ、当時の相撲は人気を博したのでしょうし、力士も雷電為右衛門を倒すべく稽古に励み、その積み重ねが今日の相撲人気の原点になったと思えるからです。
このように私は「雷電為右衛門対白鵬戦」を「白鵬の勝ち」と予想しましたが、あなたならどのような予想を立てますか?
追記:2022年1月26日
雷電は信濃国(現在の長野県)出身なのですが、この年の初場所で同じ長野県出身の御嶽海が大関昇進を果たし話題となりました。
※参照:御嶽海の母親や出身大学について。所属部屋はどこ?
この件に関し、雷電の子孫である関賢治さんは以下のようにコメントされています。
雷電と同じような強い大関になって欲しい。
雷電の時代は「横綱」が名誉職だった時代。「強い大関」という言葉には、「大関・雷電」という意味合いを強く感じます。御嶽海にはこの地位を乗り越え、各界の最高位を担って欲しいですね。
土俵の大きさが違うので、 一発勝負だと、どちらかが圧勝しそう!!
土俵を大きくしたことで、突き押し相撲は、不利に成った!土俵を拡げろと言う考えもあるらしいが、良くないと思う。
十三尺でやれば雷電 十五尺でやれば白鵬ではないか??
基本的な体力が桁違いだと思う。便利な世の中にどっぷり浸かった現代人の体力と機械などほぼない江戸時代の人間の体力は比べ物にならないと思う。
よって雷電の圧勝。