横綱土俵入りの露払いと太刀持ちとは。どうやって決めるの?
2017年に横綱昇進が決まり、雲龍型による
横綱土俵入りを行う事となった稀勢の里関。
ところで、この横綱土俵入りですが、
左右に力士が2人、座っている事について
疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか。
こうした横綱土俵入りの露払い、太刀持ちという役割の概要や、
力士をどうやって決めるのかについてまとめてみました。
横綱土俵入りにおける「露払い」「太刀持ち」とは?
以下の画像のように、横綱土俵入りの際には
左右にそれぞれ力士が1人ずつ控えていますよね。
このうち、左側の刀を持っている力士を「太刀持ち」と呼び、
化粧回しを持って右側に控えている力士を「露払い」と呼びます。
まず「太刀持ち」ですが、歴史上の武将や大名の後ろに
刀を持って控えている小姓が由来とされています。
太刀持ちが使う刀ですが、人を斬るような刀ではなく、
竹を削ったものを刀に見立てた
「竹光(たけみつ)」と呼ばれる刀を
使用されるケースが中心となっています。
かつては本当の刀が使用されていた時期もあったのですが、
戦後GHQによって真剣の使用が禁止されたという説も残されています。
一方の「露払い」に関しては、
横綱などの偉い人が歩く道を先に進む人で、
露で汚れている草花に偉い人が触れない為に
置かれた役割をその由来としています。
「露払い」という役割は横綱土俵入り以外にも見られており、
天皇陛下など皇族の方が乗る列車の安全を確保する為に、
こうした列車の前に予め別の列車を走らせておく事を、
「露払い列車」と呼ぶケースもあります。
後に控える偉い人を引き立てる役割だと考えてもいいでしょう。
ですので、横綱土俵入りを行う為に土俵へ進む順番としては
「露払い→横綱→太刀持ち」という順番になっているんですよね。
(厳密には、露払いの先に行事が進む事となっています)
また、露払いと太刀持ちの関係としては、
より番付が上の力士が太刀持ちを努める事となっているため、
一般的に後者の方が上だとされています。
横綱土俵入りの露払いと太刀持ちはどうやって決めるの?
ところで、横綱土俵入りの露払いと太刀持ちですが、
一体どうやって決めるのでしょうか。
一門の力士から選ばれているのか・・・?
これについては基本的に、横綱と同じ部屋に所属している
番付が幕内で、かつ関脇以下の力士が選ばれる傾向にあります。
同じ部屋に大関がいても、選ばれる事は原則ありません。
例えば貴乃花親方が現役時代行った土俵入りにおいて、
同じ二子山部屋の大関だった貴ノ浪が横綱土俵入りの
露払いや太刀持ちに選ばれたケースはありませんでした。
ただし、こうした条件に当てはまる力士がいない場合は
その横綱が所属する一門の部屋から、条件に該当する力士が
露払いや太刀持ちを努めるケースもありますね。
2017年1月に横綱昇進が決定した稀勢の里関の場合は、
太刀持ちが同じ田子の浦部屋に所属する高安関で、
露払いが田子の浦が所属する二所関一門に所属する
二所ノ関部屋の松鳳山関という形になっていました。
また、横綱を務めた力士が引退相撲を行う場合、
断髪式を行う前に最後の土俵入りを行う事になっているのですが、
この時、露払いと太刀持ちを努める力士は
現役の横綱が努めるという事が慣例となっていました。
この場合は、一門の力士ではないんですね。
ただし、横綱がいない場合や休場している場合は、
部屋や一門が同じ力士がこの2つを努めるケースもあるなど、
上記の慣例は薄れつつあります。
2010年に元横綱・朝青龍が引退した時は、
同じ高砂部屋に所属していた朝赤龍関が露払いを務めており、
また太刀持ちに関しては、所属する高砂一門とは全く関係のない
当時大関だった日馬富士関が選ばれたケースもあります。
この記事のまとめ
横綱土俵入りにおける露払いと太刀持ちについて、
どうやって決めるのかも含めご紹介しました。
太刀持ちや露払いを務める事で手当はつかないものの、
選ばれた力士にとっては非常に名誉な事だと言われています。
横綱と同じ部屋に該当する力士が居ない場合は、
選出基準が一門にまで広がりますので、
「もしかしたら自分が選ばれるかも!?」
と期待している幕内力士も少なくないかもしれませんね。
なお、以下の記事では横綱土俵入りの型である
雲龍型と不知火型の違いについて解説しているので、
興味があれば一度ご覧になってみて下さいね。
※参照:雲竜型と不知火型の違いと、それぞれを選んだ力士について